電気工事会社で働いていると、いずれ電磁接触器について理解しなければならないときが来るでしょう。しかし、日常的に使用することが少なく、基礎的な知識や仕組みからよくわからない人も多いです。 そこでこの記事では、電磁接触器の概要に加え、混同されがちなマグネットコンダクタ・安全ブレーカとの違いを解説します。電磁接触器の主な種類と原理について解説しますので、電磁接触器を基礎から学びたい人は、ぜひ本記事を参考にしてください。

電磁接触器とは?

電磁接触器とは、電気制御機器のひとつであり、機械や設備の電気系統に関わる際にひんぱんに使用される装置です。電磁接触器は「マグネットスイッチ」とも呼ばれ、制御盤の中に設置されているのをよく目にするでしょう。

主な機能は、負荷の動作をオン・オフするスイッチとして働くことです。負荷とはモーターやランプ、ヒーターなどを指します。電磁接触器の主接点が電源と負荷を接続し、電路を開閉する役割を果たすことで、負荷の作動や停止が制御される仕組みです。

主接点は通常3つあり、三相誘導電動機などのスター結線やデルタ結線のコイルに接続されるケースが多いです。また、主接点のほかに補助接点も備わっている場合があります。

補助接点は主回路とは異なり、操作回路で用いられることが一般的です。主接点は強い電流を取り扱うため頑丈に作られている一方、補助接点は比較的弱い電流で操作されるため小型なことが特徴です。

電磁接触器は、取り扱う負荷の容量に応じてさまざまな機種が販売されています。負荷が大きくなるほど、電磁接触器本体と主接点のサイズも大きくなります。そのため、適切な電磁接触器を選ぶことで、安全に、そして効率的な電気設備の制御が可能です。 電磁接触器の使用は、負荷の動作を精密にコントロールするうえで欠かせないものです。電気工事に従事する技術者は、基本的な知識として理解しておくべき重要な装置といえるでしょう。

マグネットスイッチ(電磁開閉器)とは?

マグネットスイッチ(電磁開閉器)とは、簡単に説明するとモーターの運転制御に欠かせない装置です。ここからは、マグネットスイッチの機能に加えて、マグネットコンダクタや安全ブレーカとの違いを解説します。

電気の制御に必要な機器

マグネットスイッチは、電気回路での接点を開閉するためのスイッチです。電気が導通する際の保護機能も備えており、日本語では電磁開閉器と呼ばれます。マグネットスイッチは、内蔵された電磁石を電気で動作させ、接点を移動させて接触させることで回路の開閉を行います。

基本構造として、三相電源に対応する3つの主接点に加え、いくつかの補助接点を備えたものが多いです。補助接点には、a接点とb接点があり、定格電流は主接点よりも小さく設計されています。通電状態を示すランプや異常停止を知らせるブザー、自己保持機能などに利用されます。 マグネットスイッチは、負荷装置の安全な運転をサポートするために不可欠な機器です。さまざまな機能により、電気回路の信頼性と安全性を高める重要な役割を果たします。

マグネットコンタクタとの違い

マグネットスイッチと同じく、制御機器として機能する「マグネットコンダクタ」ですが、マグネットスイッチとよく間違えられるため、注意しましょう。マグネットスイッチは日本語で電磁開閉器と呼ばれ、マグネットコンタクタは電磁接触器と呼ばれます。

マグネットコンタクタは、信号入力によって接点を開閉する機能のみを持ちます。しかし、マグネットスイッチとマグネットコンタクタは完全に別物ではありません。マグネットコンタクタは、マグネットスイッチの一部を構成する部品であり、熱動形過負荷継電器(サーマルリレー)と組み合わせることで、マグネットスイッチとなります。 サーマルリレーは負荷が大きくなったときの通常より強い電流を検知し、信号を出力しますが、回路事態を遮断できるわけではありません。そのため、マグネットスイッチとして機能させるには、回路を遮断できる機能を持ったマグネットコンタクタが必要となるのです。

安全ブレーカとの違い

マグネットスイッチと安全ブレーカは一見似た役割を持つように見えますが、機能と役割には大きな違いがあります。安全ブレーカは、回路全体の過電流を防ぐ装置で、回路内に流れる大きな電流を遮断できます。

一方、マグネットスイッチは接続された負荷装置に負荷がかかり過ぎないよう保護する目的で使用され、定格の10数倍程度の電流しか遮断できません。 安全ブレーカとマグネットスイッチはそれぞれ異なる役割を果たしており、電気回路の安全性と信頼性を高めるために重要な存在です。併用することで、安全で効率的な電気設備の運用が可能となるでしょう。

電磁接触器の種類と原理

電磁接触器の主な種類は、以下のとおりです。

  • 可逆式
  • 非可逆式
  • 機械ラッチ式
  • 直流操作式
  • 遅延釈放式
  • 高感度式

ここからは、電磁接触器の各種詳細と原理について解説します。

可逆式

可逆式の電磁接触器は、三相電動機で使用される特別なタイプの電磁接触器です。三相電動機は、U相・V相・W相の三相の電力で動くため、二相の接続を入れ替えると電流の流れる方向が逆転します。逆転する特徴を利用し、クレーンやコンベアなどの機械で正転と逆転の動作を行えるように設計されています。

さらに、可逆式の電磁接触器は、内部で入力側と出力側の配線を切り替えることが可能です。通常は、U-U、V-V、W-Wという接続がされており、これにより通常の運転が可能です。 しかし、制御信号が逆転するように指示すると、接続がU-U、V-W、W-Vの形に切り替わり、電動機の回転方向が逆転します。そのため、可逆式の電磁接触器は正転と逆転の動作を迅速かつ確実に切り替えられるのが特徴です。

非可逆式

非可逆式の電磁接触器は、一般的な用途で広く使用されるタイプの電磁接触器です。非可逆的の接触器は、電動機の接続方向を逆転させる機能を持たないため、可逆式と区別されています。 非可逆式は、一定の方向での動作が求められる機器やシステムに適しており、単一方向の制御が必要な場合に使われるケースが多いです。シンプルな分、信頼性の高い運用が可能なため、一般的な電気制御システムで多く採用されています。

機械ラッチ式

機械ラッチ式の電磁接触器は、制御信号がオフになっても主接点が開放されない特徴を持っています。主接点を開放するためには、専用の制御信号が必要です。このような特性から、一度作動させた後に停止させたくない場合に適しています。 具体的には、発電所にある補助機器用の電動機や電力用コンデンサ、リアクトルなどで使われることが多いです。

直流操作式

直流操作式の電磁接触器は、制御信号に直流電源を使用する方式で、制御用の直流電源を使用したい場合に適しています。一般的に交流信号を用いると、制御コイルにうなり音が発生する場合がありますが、直流操作式の電磁接触器を使用すると、うなり音の問題を解消できます。 そのため、直流操作式は、静音が求められる環境や交流信号による干渉を避けたい場合に有効です。直流操作式の利用により、制御システムの信頼性と静音性を高められます。

遅延釈放式

遅延釈放式の電磁接触器は、制御回路にコンデンサが備わっており、仮に制御信号が途絶えてしまっても数秒間は接続を保てるのが特徴です。そのため、重要な機器の電源を瞬間的な停電から守るために使用されます。ほかにも、大規模プラントの高輝度放電ランプなどでも利用されることが多いです。 高輝度放電ランプは、金属蒸気を高圧放電で発光させる仕組みのランプであり、再点灯に時間がかかるのがデメリットです。電圧を保てない場合はすぐに消灯するため、遅延釈放式の電磁接触器を使用することで、安定した電源供給を確保し、ランプの予期せぬ消灯を防げます。

高感度式

高感度式の電磁接触器は、制御信号の入力部に信号増幅用のトランジスタを搭載した方式です。近年の制御用マイコンは3.3Vや5Vで動作し、出力電流も数十mAと小さいため、電磁接触器の制御信号としては電圧も電流も不足してしまいます。

一般的な問題解決の方法は、外付けの信号増幅器を設置することですが、購入にコストがかかったり、設置スペースを考えたりなどの問題が伴います。 このような問題を解決するために開発されたのが、高感度式の電磁接触器です。高感度式では、電磁接触器の内部にトランジスタを組み込み、信号を増幅して検知します。そのため、マイコンの出力でも十分に制御が可能となり、外付けの信号増幅器を購入・設置する必要がなくなります。

まとめ

電磁接触器は電気制御機器の一種で、マグネットスイッチ・電磁開閉器と呼ばれることもあります。主接点と補助接点を持ち、負荷の作動や停止を制御するスイッチとして機能します。

電磁接触器と混同されることが多いマグネットコンタクタは、電磁接触器として信号入力によって接点を開閉し、マグネットスイッチの一部を構成する部品です。同様に混同されがちな安全ブレーカは、回路全体の過電流を防ぎ、短絡電流を遮断する機能を持った機器です。

電磁接触器にはさまざまな種類があり、可逆式、非可逆式、機械ラッチ式、直流操作式、遅延釈放式、高感度式があります。それぞれの種類が特定の用途や環境に適しているため、使用目的や状況に応じて選ぶことで、より効率的な運用が可能です。

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