電工ナイフは、電気工事現場で欠かせない専門工具のひとつで、電気工事の際に電線やケーブルの被覆を剥ぐために使用されます。安全かつ効率的に作業を進めるために、電工ナイフの特徴や種類の違い、正しい手入れ方法を理解し、適切なものを選びましょう。本記事では、電工ナイフの特徴をはじめ、選び方や長持ちさせるための手入れ方法について詳しく解説します。初めて電工ナイフの購入を検討している方はもちろん、今より使いやすいものを探している方も、ぜひ参考にしてみてください。

電工ナイフの特徴は?

電工ナイフは、電気工事で電線やケーブルの被覆を剥いたり、切断したりするために使用される工具です。とくに太いケーブルには、カッターナイフやワイヤーストリッパーよりも扱いやすく、効率的に作業できる点が特徴です。

電線・ケーブル加工には、電工ナイフの使用が向いています。なぜなら、電工ナイフは刃の形状・グリップ・材質に電線・ケーブル加工に特化した設計がされているためです。

刃の形状は、一般的なカッターと比べて厚みがあり、わざと切れ味が鈍く設計されているため、電線の芯線を傷つけにくくなっています。電線を傷つけず被覆だけを剥ぐことができるため、作業効率が向上します。さらに、芯線を傷つける心配がないことから、断線や感電、火災などの電気トラブルも防げます。

また、刃の素材にはステンレスや鉄、銅などが使われており、耐久性に優れています。これにより、硬さの異なる電線やケーブルにも対応できます。

電工ナイフのグリップは、握りやすく・滑りにくいように設計されています。電線・ケーブルをしっかり掴めるよう手にフィットしやすいデザインです。長時間作業をしていても手が疲れにくく、安全に作業が進められるよう考慮されています。切れ味の鈍さも相まって、手を切るなどの思わぬ怪我も防げるでしょう。 電工ナイフは野外で使用することが多い工具のため、錆びにくい素材など耐久性や耐食性にも考慮し、設計されています。より長持ちさせるためにも定期的に手入れを行いましょう。

電工ナイフの用途

電工ナイフの主な使用用途は、電線・ケーブルの被覆剥きや切断ですが、そのほかにも硬い素材のものを切断する際やちょっとした削り作業にも役立ちます。電工ナイフさえあれば、ほとんどの電線・ケーブルで加工が可能です。

住宅内の配線に使用される平たいVVFケーブルや丸型のVVRケーブル、VVFやVVRよりも太いCVTケーブルや高圧ケーブルにも対応でき、効率的に作業を進められます。

また、現場によってはスラブ配管や間仕切り配管、露出配管などに使用されるPF管の切断に電工ナイフが使用されることがあります。耐久性に優れているため、スイッチボックスといったボード開口時の微調整などの削り作業にも用いられます。さまざまな用途で活躍する工具のため、電気工事現場で働く方にとっては必要不可欠な工具といっても過言ではありません。

電工ナイフはどのように選ぶ?

作業効率の向上や安全性を確保するためにも、電工ナイフを選ぶ際には、以下の5つのポイントを考慮し、用途や目的に合ったものを選びましょう。

  • 刃の素材
  • グリップの素材
  • 刃長と全長
  • 形状
  • 機能性

使用頻度や用途によって選ぶべきものは異なります。また、使い心地は個々によって異なるため、可能であれば、実際に手にとって使い心地を確認しましょう。以下では、電工ナイフを選ぶ際の5つのポイントについて詳しく解説します。

刃の素材

電工ナイフは刃の厚みや切れ味の鈍さが特徴ですが、刃の素材によって切れ味や耐久性が異なり、作業内容にも影響します。

電工ナイフの刃の素材は、主に鉄・ステンレス・銅の3つです。

一般的に使用される素材は鉄製で、強度が高く折れにくい特徴があり、やや乱暴に扱っても耐えられます。ほかの素材に比べて安価で入手できるため、コストを抑えた商品が多く、安く手に入れたいという方に向いています。

また、切れ味が落ちたときには、研げば切れ味を復活させられます。しかし、水に弱く濡れると錆びてしまうため、小まめな手入れが必要です。

ステンレス製は、耐久性が高く錆びにくいため、鉄製よりも手入れの手間が少なく長く使えます。そのため、使用する頻度が少ない方や、こまめな手入れをするのが面倒な方に向いています。ただし、ほかの素材に比べて高価なものが多いです。 銅製は、研ぎやすく切れ味の調整が簡単という特徴があり、初心者でも使いやすいです。しかし、錆びやすいため、定期的に手入れしなければなりません。使う頻度が高い方や、手入れをこまめにできる方に向いています。

グリップの素材

電工ナイフは、芯線を傷つけないよう慎重に扱う必要があるため、グリップの持ちやすさも考慮して選びましょう。グリップの素材の違いは、作業の快適性や安全性に大きく影響します。

電工ナイフのグリップの素材は、主にラバー・プラスチック・木の3つです。

ラバーグリップは、弾力性が高く手にフィットしてしっかりと握れます。手に汗をかいても滑りにくいため、より安全に作業を進めたい方におすすめです。また、スタイリッシュな見た目のものも多く、デザインにこだわりたい方にも向いています。ただし、熱に弱いため、真夏や高温になりやすい場所での使用・保管には注意が必要です。

プラスチックグリップは、軽量で耐久性に優れています。高所から落としたり、水に濡れたりしても壊れにくいため、野外での使用におすすめです。グリップに汚れがついたときにも手入れしやすいのが特徴です。しかし、長時間使用していると滑りやすくなってしまうことがあるため、注意が必要です。木のグリップは、経年変化により使用しているうちに手に馴染みます。天然素材ならではの温かみがあり、使い込むほどに手になじみます。そのため、自分に合ったグリップを作り上げていきたい方におすすめです。油分がついても滑りにくい特徴もあります。ただし、水に弱く割れやすいため、野外や高所での使用の際は注意が必要です。

刃長と全長

電工ナイフの一般的な長さは、刃長が約7センチ、全長が約20センチです。しかし、ものによって長さに違いがあり、刃の長さを調整できるようなものもあります。刃長や全長は、作業効率や安全性に影響するため、適した長さを選んでください。

VVFケーブルなどの一般的な電線であれば、中程度の刃長のものが使いやすいでしょう。短い刃は、細かな作業や狭い場所での作業に向いている一方で、厚みのある被覆を剥ぎ取るには時間がかかることがあります。長い刃は、厚みのある被覆も一回で多く剥ぎ取れる一方で、細かな作業には向いていません。

全長は握りやすさや作業姿勢に影響します。短い全長のものは持ち運びしやすく狭い場所での作業に向いている一方で、力が入れにくく作業効率が下がることがあります。長い全長のものは力が入れやすく作業効率はよいですが、持ち運びに不便を感じることがあります。 電線・ケーブル加工は、先端から10センチや2センチの部分の被覆を剥ぎ取ることが多いです。10センチや2センチの刃長・全長の場合、被覆を剥ぎ取る際にメジャーを出さず、電工ナイフだけで長さが測れます。作業の効率性を求めるのであれば、刃長や全長がよく使う長さと同等のものを選ぶことをおすすめします。

形状の種類

電工ナイフの形状には大きく分けて、固定刀型と折りたたみ型の2種類あります。それぞれの形状には異なる特徴があるため、用途や使い勝手にあわせて選びましょう。

固定刀型の電工ナイフは、刃が本体に固定されており、鞘に収納するタイプです。刃が固定されているため、丈夫で耐久性に優れています。

また、刃が研ぎやすく、定期的な手入れが求められる素材のものに適しています。使用時には鞘から取り出すだけで、素早く作業に取り組めるでしょう。ただし、鞘ごと持ち運ぶ必要があり、収納場所をとるため携帯性にはやや劣ります。強度を重視する方や頻繁に使用する方におすすめのタイプです。

折りたたみ型の電工ナイフは、刃を折りたたんで収納できるタイプです。刃をおりたたむことでコンパクトに収納できるため持ち運びしやすく、誤って怪我をするリスクも軽減できます。ただし、折りたたんでいるため取り出しに時間がかかり、刃が緩んでしまうこともあります。持ち運びが多い方や安全性を重視したい方におすすめのタイプです。

機能性

電工ナイフには、便利な機能がついているものもあります。作業効率をアップしたい方や長年使い続けたい方は、機能性も考慮して選びましょう。

大手メーカーのなかには替え刃を販売しているところがあります。刃こぼれをした際に、替え刃を使うことで電工ナイフを長く使い続けられます。これにより、買い替えを避けつつ、ランニングコストを抑えられます。

VVFケーブルを頻繁に扱う方であれば、割り線・皮むき機能のある電工ナイフがおすすめです。芯線を傷つけることなく2つのケーブルに分けられるうえに、被覆も簡単に剥けます。さらに、先端も刃になっていてハンマーで叩いてノミのようにも使えるものや、万が一の電気を止め忘れてしまったときにも安心な絶縁機能など、ものによってさまざまな機能があります。用途や使用頻度、シーンなどに合わせて適したものを選んでください。

電工ナイフを正しく手入れしよう

電工ナイフを長く使用するためにも定期的に手入れすることをおすすめします。もともと切れ味が鈍い特徴のあるナイフですが、長期間手入れせずにいるとさらに切れ味が悪くなってしまい、作業効率にも影響します。以下では、正しい手入れ方法について解説します。

毎日正しく手入れする

電工ナイフを長持ちさせるためには、毎日柔らかい布で拭き取り手入れすることをおすすめします。毎日拭き取ることが難しい場合でも、使用後は必ず拭き取りましょう。

水分や汚れがついている場合はもちろん、目に見えない汚れが付着していることもあるため、忘れず拭き取ることが大切です。水分や汚れをそのままにしておくと、固着して錆びる原因にもなるため、注意しましょう。 万が一、錆びてしまった場合には、錆びた部分を削り落とします。クレンザーなどの研磨剤が入った洗剤を使用すれば簡単に落とせます。また、濡らしたコルクや消しゴムでも錆を落とせます。

研ぎ石は角砥石がおすすめ

電工ナイフの切れ味を維持するためにも、定期的に研ぎましょう。また、研ぐ際には角砥石(かくといし)の使用がおすすめです。

砥石は、刃物を研いで切れ味を復活させるための道具で、角砥石はその名のとおり角型の砥石です。[1] 砥石の表面には、微細な研磨粒子が多数存在しており、刃物をこすりつけると刃先の金属が削られ、鋭い刃先が形成されます。

角砥石は、粒度により荒砥・中砥・仕上げ砥があり、電工ナイフを研ぐ際に使用するのは荒砥または中砥です。刃こぼれがひどい場合には荒砥で整え、中砥で仕上げます。研ぎ方は、砥石を水で濡らし、刃を砥石に対して45°程度傾け、押すように研ぎます。力を入れすぎず、一定のスピードでリズムよく研いでください。ナイフの種類や人によって研ぎやすいやり方は異なるため、慣れてきたら自分なりに工夫して研ぎ方を変えてみるとよいでしょう。

サビ防止の手入れも忘れずに

電工ナイフが錆びてしまった場合、軽いものであればセルフで落とすこともできますが、頑固なものであれば刃物屋などの専門業者にメンテナンスを依頼する必要があります。

そのため、錆びないように日ごろからサビ防止の手入れを行いましょう。手入れ方法は、刃の素材によって異なります。

鉄製は錆びやすいため、水に濡れた場合は乾いた布で完全に拭き取ってください。とくに刃の部分は水滴が残らないよう丁寧に拭きましょう。しばらく使用しない場合は、植物性のオイルを薄く塗り、空気に触れないようにします。湿気の多い場所は錆が発生しやすいため、風通しのよい乾燥した場所での保管がおすすめです。

ステンレス製は錆びにくい素材ですが、完全に錆びないというわけではありません。塩分や酸性の物質が付着すると錆が発生することがあるため、注意しましょう。そのほかの素材と同様に使用後は必ず拭き取り、乾燥させてから保管します。 銅製は、鉄製と同様に錆びやすいため、水に濡れた場合は水滴が残らないよう丁寧に拭き取ってください。また、酸化しやすいため、しばらく使用しない場合はワックスやオイルを塗り空気に触れないようにして、風通しのよい乾燥した場所で保管します。

まとめ

電工ナイフは電気工事現場では欠かせない専門工具で、電線・ケーブルの被覆剥きや切断などの用途に使用されます。刃やグリップの素材、形状はそれぞれ異なるため、使用用途や環境、作業頻度などを考慮し、自分に合ったものを選ぶことが大切です。

また、長期間使用するためには、定期的な拭き取りや研磨など、適切な手入れを行う必要があります

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