電気を使用するにあたって欠かせない存在として、分電盤の名前が挙げられます。しかし、分電盤とは何か、またどのような役割を担っているのでしょうか。
そこで、今回は分電盤の役割をはじめとする、基礎知識について解説します。また、分電盤の種類やほかの電気設備との違い、分電盤を交換する際に押さえておきたい分電盤の選び方まで紹介するので、分電盤に関する情報収集を行っている人は、ぜひ参考にしてください。
分電盤とは
分電盤とは、配電盤によって送られてきた電気を照明やエアコン、コンセントなどに送る装置のことです。住宅をはじめ、ビルや工場などの大型施設でも使用されています。
分電盤の中には、ブレーカーなどが配置されています。一般家庭では、玄関や勝手口、洗面所など目につくところに設置されているケースが多いため、目にしたことがある人も多いでしょう。
分電盤の役割は、電気の分配だけではありません。漏電を検出した場合、火災や感電などの事故を防ぐために、すぐに電気を止める漏電遮断器としての役割があります。また、電気の使いすぎを監視し、限界を超えると電気を止めるのも、分電盤の重要な役割のひとつです。
ビルや商業施設であれば、フロアの改修工事やリフォームをする際、そのフロアにある分電盤の電気さえ落としてしまえば、わざわざ全停電しなくてよいメリットもあります。
分電盤とほかの電気設備との違い
分電盤はほかの電気設備と混同されやすい存在ですが、それぞれ役割が異なります。具体的なほかの電気設備との違いについて、順番にチェックしていきましょう。
配電盤との違い
分電盤と混同されやすい電気設備として、配電盤の名前も挙げられます。配電盤とは、発電所から送られてきた電気を分電盤に送る機器のことです。金属製の箱型に入っているキュービクル式、そしてフレームパイプで組まれているオープンフレーム式の2種類があります。
電気は高い電圧で送電すると、送電の際に発生する抵抗などのロスが減少するという性質があるため、発電所からは高電圧の電気が送電されるのが一般的です。しかし、電圧が高いままの電気をそのまま電気機器に使用することはできません。
そこで登場する設備が配電盤です。配電盤は、電化製品などが耐えられる程度まで電気を変圧する役割を担っています。学校をはじめ、ビルや工場など、一定以上の規模の施設に設置されるケースが多い設備のため、一般家庭で目にする機会はほとんどありません。 この配電盤によって変換された電気を、各電気機器に分配するのが分電盤の仕事です。
動力盤との違い
動力盤とは、機械を動かすための電気を供給するための電気設備です。主に工場やビルなどで使用されているポンプやエアコン、ファンなどへ電気を供給するために設置されます。
各動力設備に電気を供給する役割を担っているため、動力盤は分電盤のひとつともいえる存在です。それぞれの電気設備は現場や設置場所に適した形でつくられるため、使い方や使用目的で動力盤、または分電盤と区別される場合があります。
大きな違いとしては、分電盤がさまざまな電気設備に送電するのに比べ、動力盤は容量が大きな電気設備への送電を担当している点が挙げられます。動力盤なのか分電盤なのかわからない場合は、動力盤は盤の扉部分に動力盤と記載されているか確認しましょう。
制御盤との違い
制御盤とは、読んで字のごとく機械や装置などを制御、操作するための電気設備です。構造的には、動力回路と制御回路、2つの回路で構成されており、建物の空調設備や工場の生産ライン、エレベーターなどで使用されています。
金属製のキャビネットという箱に、機能を実現するために必要な電気部品や電気機器が収められており、サイズ感は配電盤並みの大きいものから、分電盤にも見える壁掛けタイプの小さなものまで多種多様です。また、扉面にはスイッチやランプ、電流計などが備え付けられています。 屋外用の制御盤は屋外盤、屋内用の制御盤は屋内盤と呼ばれるのが一般的です。機器や設備などのコントロール機能は同じでも、現場の設置環境が屋外か屋内かによって、耐候性をはじめとする保護機能のスペックに違いがあります。
ブレーカーとの違い
ブレーカーとは電気の流れをbreak、つまり遮断するための装置です。ブレーカーには、規定以上の電気が流れたときに、電気を落とす役割があります。そんなブレーカーを収めているのが分電盤です。
ちなみに、ブレーカーにはアンペアブレーカー、安全ブレーカー、そして漏電ブレーカーの3種類があります。アンペアブレーカーは、電気会社と契約しているアンペア数を超える電気量を使ってしまった際、電気の供給を遮断する役割をもつブレーカーです。契約ブレーカー、またはサービスブレーカーとも呼ばれています。
家全体の電気を管理しているアンペアブレーカーに対して、回路ごとの電気を管理しているのが安全ブレーカーです。電気器具やコードの故障でショートしたときや、使いすぎて過電流が流れたときに電気を自動的に遮断し、電線を保護してくれます。 そして、建物内の配線や電気器具の漏電を素早く感知し、電気事故を未然に防ぐブレーカーが漏電ブレーカーです。感電や火災など、重大な事故を防いでくれる重要な役割を担っています。
キュービクルとの違い
キュービクルとは、発電所から変電所を通して送られてくる高電圧の電気を、100ボルトや200ボルトに降圧する受電設備を収めた金属製の箱のことです。
キュービクル式高圧受変電設備とも呼ばれており、箱のなかには変圧器をはじめ、断路器やコンデンサなどが収容されており、感電や停電などのトラブル防止に一役買っています。
キュービクルは主に商業施設やオフィスビルに代表される大型施設に、分電盤は個人宅をはじめとする小規模な建物に設置する電気設備です。キュービクルができるまで、大型施設では電気室や変電室と呼ばれる部屋で変圧が行われていました。
分電盤の種類
送られてきた電気を分配する役割を担っている分電盤は、設置場所や機能によっていくつかの種類に分類されます。具体的にどのような種類の分電盤が存在するのか、順番にチェックしていきましょう。
設置場所による分類
分電盤は、設置場所によって露出型と半埋め込み型、そして兼用型の3つに分類されます。それぞれの分電盤の特徴は、以下のとおりです。
露出型
露出型とは、壁にそのまま取り付けるタイプの分電盤で、分電盤を取り付けた分でっぱりが出るのが特徴です。露出型の分電盤には、自立式やポール取り付け式、壁掛け式のものがあります。どうしても見た目が目立ってしまいますが、どこにでも取り付けやすい点がメリットです。
半埋め込み型
半埋め込み型とは、読んで字のごとく分電盤が半分ほど壁に埋め込まれているタイプを指します。壁に作ったへこみの部分に分電盤を設置するため、でっぱりが少ないのが特徴です。凹凸がほとんどないため、見た目もすっきりしますし、邪魔になる場面もほとんどないでしょう。 ただし、分電盤を取り付けるためのスペースをつくる工事コストがかかる、場所によっては事前にスペースを設けることが困難な場合もある点がデメリットです。
兼用型
兼用型は、露出型と半埋め込み型、どちらのタイプでも取り付けが可能な分電盤のことです。どのような分電盤を選択すればよいかは、分電盤を設置する環境によって異なります。事前の調査が甘いと、いざ分電盤を用意したものの、異なるタイプの分電盤の方がよかったという事態を招く可能性も否定できません。
兼用型であれば、設置場所や予算に合わせて柔軟に取り付けスタイルを変更できます。
機能による分類
機能によって分電盤を分類する場合、住宅用分電盤と動力用分電盤、そして太陽光発電用分電盤の3種類に分けられます。それぞれの分電盤の特徴について、ひとつずつチェックしていきましょう。
住宅用分電盤
住宅用分電盤とは、その名のとおり一般家庭向けにつくられている分電盤のことです。
リミッターや主幹ブレーカーなどから構成されており、最近ではオール電化やEV充電器などの大容量に対応した製品をはじめ、雷による機器の故障や地震による電気火災を防ぐ安心機能を備えた高機能製品も登場しています。
そのため、それぞれの家庭における電気の使用状況や暮らしのスタイルに応じて、最適な住宅用分電盤を選ぶことが可能です。
動力用分電盤
動力用分電盤とは、住宅用分電盤とは異なり工場や商業ビルをはじめとする、大型施設で採用される分電盤のことを指します。ポンプやエアコン、ファンなど、大型の設備に対して膨大な電力を供給するために設置されるのが一般的です。
太陽光発電用分電盤
太陽光発電には専用のブレーカーが必要ですが、そのブレーカーが備わっているのが太陽光発電用分電盤です。太陽光発電によって生み出された電力が余った場合、管轄の電力会社に売電できます。
売電するためには、電力会社から送られてくる電流とは逆の流れを起こさなければなりません。太陽光ブレーカーがあれば、住宅内で電力が余っている場合に電流の流れを逆にし、自家発電したエネルギーを送電網に流すことが可能です。 また、太陽光発電システムで何らかのトラブルが発生した場合、電気の流れを遮断し、事故を防いでくれます。
分電盤の費用
分電盤を交換する場合、本体の購入費用と交換費用を用意する必要があります。それぞれの費用相場について、順番にチェックしていきましょう。
本体価格
本体価格は20,000〜40,000円が相場ですが、購入する分電盤の種類によって値段は上下します。また、業者ではなく自分で分電盤本体を購入するのであれば、手数料を抑えられるでしょう。
ただし、用意する分電盤の種類や大きさは、事前に業者と相談してください。間違えて購入した場合、返品の手間がかかりますし、最悪の場合、返品ができずお金だけ失ってしまう可能性もあるでしょう。 分電盤を購入する場合は、オンラインショップの利用がおすすめです。電材ネットでも、幅広い種類の分電盤を扱っています。興味を持った人は、ぜひ公式サイトからチェックしてみてください。
交換費用
分電盤の交換は、有資格者の電気工事業者に依頼する必要があります。
交換費用は工事の条件によっても変動するため、あらかじめ見積もりを依頼しておきましょう。100,000円程度予算を確保できれば、安心して工事の依頼ができます。 ちなみに、分電盤の交換費用を抑えるために自力で工事を行う場合、電気工事士の資格が必要です。資格さえあれば、必要な予算は分電盤本体の購入費用のみになるため、経済的といえるでしょう。ただし、工事の際は感電事故に注意してください。
分電盤の寿命と交換タイミング
電気設備である分電盤には、寿命があります。もし寿命を迎えて壊れてしまうと、過負荷やショートが発生してもブレーカーが正しく作動しなくなるため、大きな事故が発生するリスクが高まるでしょう。 思わぬトラブルを避けるためには、分電盤を適切なタイミングで交換することが大切です。以下は、分電盤の寿命と交換タイミングの解説になります。それぞれの基礎知識について、順番に確認していきましょう。
寿命
分電盤が設置されている環境や扱い方によって多少異なりますが、一般的な配電盤の寿命は10〜15年ほどです。丁寧なメンテナンスを行えば、より長く使用できる場合もあります。
しかし、内部に設置されているブレーカーをはじめとする設備には、それぞれ法定耐用年数が決められており、適切なタイミングで交換しなければなりません。分電盤が劣化したサインを見逃してしまうと、漏電による火災や家電の故障、停電など重大な事故を引き起こす可能性もあります。
交換タイミング
パナソニックをはじめとする多くのメーカーでは、13年程度での交換を推奨しています。不具合を確認してから交換しても問題ありませんが、思わぬトラブルを避けるためにも、分電盤に不具合が発生する前に、予算と相談しながら余裕を持って交換工事を行った方がよいでしょう。
築年数が経過している建物で、いつ分電盤を交換したのか見当がつかない場合は、セルフチェックを実施してください。ブレーカーが頻繁に落ちるようになるのは、分電盤が劣化したことを示す代表的な症状です。
ブレーカーが落ちると、そのたびに電気製品にダメージを与えてしまうため、できるだけ早く分電盤を交換してもらいましょう。
また、異音や発熱などの異常がないか、高温の発熱があるか、破損箇所があるかなども確認してください。症状が目視できる場合は写真を撮影し、専門業者へ相談しましょう。口頭説明に加えて写真があれば、工事前に専門業者が状況を把握しやすくなります。
漏電ブレーカーが備わっていない、古いタイプの分電盤も交換するのをおすすめします。現在では一般的に備わっている漏電ブレーカーですが、古い製品の場合は取り付けられていないケースも少なくありません。 交換時期が不明でも、分電盤のタイプで古いかどうかを確認できる可能性があります。分電盤そのものの劣化が進んでいなくても、内部に設置されている設備が古い場合は、時代の流れに合わせる形で分電盤を交換した方がよいでしょう。
分電盤の選び方
分電盤を交換する場合、新しい分電盤選びには気を配りましょう。分電盤は製品によっては特徴が異なり、設置場所や条件も限られています。適切な分電盤選びができれば、交換工事がスムーズに進むだけでなく、その後の生活も快適に過ごせるようになるでしょう。
以下は、分電盤選びのポイントになります。分電盤の交換を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
設置場所
分電盤を交換する際は、必ず設置場所を確認してください。以前と同じ場所に分電盤を設置する場合はそこまで気にする必要はありませんが、新しく導入する製品によっては、別の場所へ設置しなければならない場合もあります。
設置場所を新しく選定する場合、狭くて熱がこもりやすい場所や、周囲に障害物が多い場所はおすすめできません。分電盤は電流が流れた際に熱を発しますが、狭い場所や障害物が多い場所に分電盤を設置すると熱の逃げ場がないため、火災が発生する原因にもなりかねません。
また、埃っぽい場所も避けるようにしてください。分電盤に埃がたまると、埃が絶縁体として働き、電気の配線や部品を過熱させるため、やはり火災の危険性が高まります。 分電盤の設置場所としておすすめなのは、電気回路が容易に操作できる場所や開閉器を開閉しやすい場所、そして安定した場所などです。設置場所に悩んだ場合は、専門業者と相談して決めましょう。
分電盤の大きさ
分電盤の大きさも、分電盤を選ぶにあたって重要な要素のひとつです。分電盤の大きさは、電気設備の効率性と信頼性に大きな影響を与えます。適切なサイズの分電盤を選択すれば、電力供給を正確に管理できるため、電気設備を過負荷から守れます。
一般的な家庭の場合、30〜40アンペア程度のサイズの分電盤であれば問題ありません。将来的な電力需要も考慮して、やや大きめの分電盤を購入する人も多いです。
サイズが合っていない分電盤を利用し続けた場合、分電盤本体に大きな負荷がかかるため、火災や漏電の危険を引き起こす可能性が高いです。自分の安全を守るためにも、分電盤の大きさには注意しましょう。
専用回路の必要性
分電盤を選ぶときは、専用回路の必要性についても考慮しておきましょう。専用回路とは、ほかの電化製品やコンセントと共有ではない、その家電製品専用のブレーカー、電源のことです。
ひとつの回路で使用できるアンペア数は決まっているため、浴室乾燥機など消費電力の大きい家電を使用する場合は、専用の回路を用意するのをおすすめします。専用回路がないと、消費電力の大きい家電は同時に使用することはできません。
誤って同時に使用すれば、すぐにブレーカーが落ちてしまい、家電にダメージを与えてしまいます。分電盤や家電の寿命を短くしないため、そして火災や漏電などの事故を防ぐためにも、消費電力の大きな家電を多用する場合は、専用回路を設けましょう。
新しく設置する分電盤に専用回路を設けたい場合は、事前に専門業者に伝えれば対応してもらえます。ちなみに、専用回路の有無は、ブレーカーとコンセントで判定可能です。
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分岐回路の数
新しい分電盤を選ぶ際は、分岐回路の数にも気を配りましょう。分岐回路とは、簡単に説明すると配線系統のことです。
分岐開閉器によって分岐回路は管理されており、末端までの配線を電気的に保護する役割を担っています。分岐回路の配線のショートや電気の使い過ぎによって異常が発生した場合、電気をストップして配線が発熱したり、燃えたりしないようにすることが可能です。
分電盤の大きさや種類は、この分岐回路の数も考慮して決定してください。
まとめ
以上、分電盤の基礎知識をはじめ、ほかの電気機器との違いや交換のタイミングなどについて取り上げてきました。分電盤の役割は、配電盤から送られてきた電気をコンセントや照明、家電などに送ることです。
設置場所や機能によっていくつかの種類に分類されており、分電盤を交換する場合は、それぞれの設置場所の環境や条件に合わせて適切なタイプの分電盤を選択しなければなりません。
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