電磁開閉器は性能が安定していても、使用し続けることによって接点部分が摩耗するため、定期的に交換する必要があります。しかし、どのタイミングで交換すべきなのかよくわからない人も多いでしょう。この記事では、そもそも電磁開閉器とは何なのか、そして適切な電磁開閉器を選ぶための注意点を詳しく解説します。電磁開閉器の代表的なメーカーも紹介しますので、最適な電磁開閉器を探す際の参考にしてください。

電磁開閉器(マグネットスイッチ)とは?

電磁開閉器(マグネットスイッチ)は、磁力で電気回路の接続や遮断を行う装置のことです。主な構成要素として、電流によって磁場を生成する「ソレノイド」と呼ばれるコイルと、磁力で動作する接点(スイッチ)があります。

電磁開閉器を活用すれば、電気的な信号による物理的な操作が可能です。また、モーターの始動や停止、機械の運転管理などを自動化できます。

電磁開閉器は、一般的なスイッチと異なり、物理的に手で操作する必要がありません。電磁力を用いて接点が開閉するため、機械が高効率で動作します。産業用機械や家電製品では、動力をコントロールするのに欠かせない存在です。

電磁開閉器の主な役割は、電気エネルギーをほかのエネルギーに変換し、回路や機械などを自動的に操作することです。そのため、制御システムに適用すれば、モーターや電動機をスムーズに制御できるようになります。 具体的な用途としては、家庭用エアコンの動作制御、洗濯機の水位調整、自動車のエンジン起動などです。工業分野では、工作機械や大型プラントの運転制御にも広く使用されています。

それぞれのスイッチの特徴を解説します。用途に最も適しているのは、どのスイッチなのかを考える際に役立ててください。

電磁開閉器とマグネットコンタクターの違いは?

電磁開閉器とマグネットコンタクターは、いずれも電気回路を制御するために欠かせないアイテムです。両者には、役割や機能に違いがあります。

電磁開閉器は、主に回路の開閉とモーターなどの電動機の制御を担う装置で、異常時に回路を遮断する保護機能を備えています。一方、マグネットコンタクターは、電気回路の接続や遮断を行う部品で、電磁開閉器のような保護機能は含まれていません。

電磁開閉器は通常、マグネットコンタクターとサーマルリレー(熱動形過負荷継電器)の組み合わせにより構成されています。サーマルリレーは、電流が過剰に流れるときに異常を見つけ、適切なタイミングで信号を発信します。

しかし、サーマルリレーは回路を開閉する機能を持たないため、回路を実際に遮断するには、マグネットコンタクターの力が必要です。電磁開閉器はマグネットコンタクターと、過負荷保護を行うサーマルリレーを組み合わせたシステムといえます。いずれも似ていますが、両者を明確に区別するポイントは、保護機能の有無にあるといえるでしょう。

電磁開閉器の原理は?

電磁開閉器の原理は、コイルに電流を流すと発生する磁力を利用して、接点の動作を制御する点にあります。コイルに電気が流れると磁場が発生し、可動鉄心が固定鉄心に吸い寄せられます。その結果、可動接点が移動し、固定接点と接触して回路が接続されるのです。

電磁開閉器が動作する際、制御コイルの役割は重要です。制御信号が送られると、コイルに電流が流れ、電磁誘導により磁界が生成されます。

生成された磁力によって可動端子が動き、スイッチの接続・切断が行われます。なお、スイッチの状態は信号が「オン」の場合は接続で、「オフ」の場合は断続です。このような動作によって、電動機の始動や停止、あるいは回路全体の管理が自動化されます。

電磁開閉器は、バネの力で可動端子が元の位置に戻る仕組みを持っています。そのため、コイルへの電圧が停止すると磁力が消失し、回路が自動的にオフの状態に戻ります。

こうした構造により、電流のオン・オフを迅速かつ正確に実施することが可能です。産業機械や工業設備の信頼性を高めるのに役立っています。制御方式としては、常閉式や常開式の両タイプが存在し、使用する環境に応じて選べる点も特徴です。 このように、電磁開閉器は電気信号を利用して回路を操作し、さまざまな機器の動作を支えています。

電磁開閉器の注意点

電磁開閉器を使用する際、以下4つのポイントに注意しなければなりません。

  • 過負荷に対する保護がない
  • チャタリングに気をつける
  • 開閉動作が繰り返されて徐々に摩耗していく
  • 10年を目安に寿命を迎える

それぞれの注意点について解説します。

過負荷に対する保護がない

電磁開閉器は、基本的に電気回路の接続と遮断を行う装置ですが、過負荷に対する保護機能は備わっていません。過負荷を検知するためにサーマルリレーが組み込まれているものの、過信するのは避けたほうがよいでしょう。

サーマルリレーは、過電流による過熱を検知するものであり、完全に保護されるわけではないためです。とくに、大電流を扱う装置では過負荷時のリスクをきちんと認識することが求められます。

安全対策として、電磁開閉器の電源入力側にブレーカーを設置するのが有効です。ブレーカーを設ければ、過負荷時には自動的に回路を遮断し、事故を未然に防げるようになります。

また、電磁開閉器には、漏電を検知する機能がありません。そのため、漏電遮断機能を持つブレーカーを使用することで、より安全に使用できます。さらに、電磁開閉器周辺の配線にも注意しなければなりません。たとえば、使用するケーブルは、流れる電流に十分対応できる容量を持つものを選ぶ必要があります。適切なケーブルを使用すれば、過負荷や過電流が発生しても、配線が損傷するリスクを抑えられます。

チャタリングに気をつける

電磁開閉器がカチカチと何度も音を立てる場合、チャタリングが発生している可能性があります。チャタリングとは、電磁開閉器の接点が安定せず、短時間の開閉動作が続く現象です。

チャタリングが発生すると、接点部分が正常に作動せず、過度な摩耗や発熱、さらには溶着といったさまざまな問題を引き起こす可能性があります。チャタリングを放置すると、機器の寿命を大きく縮めるばかりか、安全性にも悪影響を及ぼすため、注意が必要です。

チャタリングの主な原因としては、外部からの振動や電圧の変動、不適切な環境での設置などが考えられます。そのため、定期的に点検やメンテナンスを実施すれば、チャタリングの発生を防げるでしょう。なお、チャタリングが発生した場合は、すぐに原因を特定し、必要に応じて部品を交換したり調整したりすることが重要です。たとえば、接点部分が消耗している場合、早めに交換すれば、大きなトラブルを未然に防げます。

開閉動作が繰り返されて徐々に摩耗していく

マグネットスイッチは、繰り返し行われる開閉動作によって、接点部分が徐々に摩耗していきます。摩耗が進行すると、接点の性能が低下し、電気回路に不具合を引き起こす可能性が高まるため、注意が必要です。

とくに、大電流を扱う装置では、摩耗が進んだ状態で使用を続けるのは避けなければなりません。摩耗によって電流が不均衡な状態になりやすく、その結果、モーターが異常に発熱して故障したり事故を誘発したりするリスクがあります。

10年を目安に寿命を迎える

マグネットスイッチは、10年を目安に寿命を迎えることが多いです。しかし、使用環境や操作頻度に応じて具体的な年数は異なります。

たとえば、大量の電流が流れる環境では、スイッチの接点が徐々に摩耗して性能が低下していくため、10年より早めに寿命が来るケースも考えられます。そのため、定期的に接点の状態を確認するようにしましょう。摩耗が進んでいる場合、スイッチ全体または接点部分を交換すると、安全に使用し続けることが可能です。電磁開閉器の寿命を判断する際は、以下4つの要素を考慮する必要があります。

  • 通電の安定性
  • 開閉の確実性
  • 過負荷への対応
  • 使用電圧の耐久性

いずれかの要素が欠けている場合には、寿命と判断できます。また、メーカーが指定する開閉回数を超えた場合も交換が必要です。

寿命を過ぎた電磁開閉器をそのまま使用すると、火災や感電などのリスクが高まるため、適切なメンテナンスが欠かせません。さらに、電磁開閉器の劣化は高温や低温、湿度、腐食性ガス、過電圧など、さまざまな環境要因の影響を受けます。このような要因を考慮しながら、適切な使用環境を保つことも、寿命を延ばすためには欠かせないポイントです。

電磁開閉器の選定方法

電磁開閉器を選ぶ際は、以下7つのポイントを押さえましょう。

  • 電動機の回転方向
  • 定格容量
  • 接点の開閉回数
  • 操作コイルの定格電圧
  • 本体のサイズ
  • 補助接点の数
  • サーマルリレーの呼び

それぞれのポイントについて解説します。

電動機の回転方向

電磁開閉器を選定する際は、電動機の回転方向に注意しなければなりません。具体的には、可逆式、または非可逆式のどちらかを選ぶ必要があります。

電動機の回転方向が一方向のみである場合は、非可逆式の電磁開閉器が適しています。一方、正転と逆転の両方の回転方向が必要な場合は、可逆式の電磁開閉器が必要です。

たとえば、可逆式の電磁開閉器では、2つの電磁接触器が使用されます。一方の接触器には正相が入力され、もう一方には逆相が入力されます。このようにしてコイルを制御すると、モーターの回転方向を切り替えられるようになります。なお、2つの接触器が同時に作動しないよう、物理的なインターロックが設けられているため、誤操作による短絡やトラブルの発生を防ぐことが可能です。

定格容量

電動機の定格出力に基づいて適切なフレームサイズを決定することが不可欠です。定格容量とは、電動機が安定して動作するために必要な最大の電力を指します。

定格容量を基準に、電磁開閉器のサイズや能力を選びましょう。適切な定格容量を選定すると、電磁開閉器がモーターや機器に対して過負荷を避けるようになるため、動きが安定しやすくなります。

定格容量が適切でない場合、過電流や過負荷が発生するリスクが生じます。過電流や過負荷は、機器の故障や事故の原因となる可能性があるため、慎重に選定することが重要です。 定格容量に合わせて電磁開閉器を選ぶことは、システム全体の安全性と効率性を維持するために欠かせない手順といえるでしょう。

接点の開閉回数

電磁開閉器の選定において、接点の開閉回数は注意が必要な要素のひとつです。なかでも主接点は、何度も開閉を繰り返すため、接点の摩耗が進みやすく、機器の寿命に直接影響を与えます。

そのため、適切な電磁開閉器を選ぶには、使用する環境での開閉回数を正確に把握することが必要です。一般的な電磁接触器の耐用年数は10年とされていることから、1年あたりの開閉回数に耐用年数の10を乗じた値を基準にするとよいでしょう。なお、開閉回数の見積もりは、機器の制御方法や使用頻度に大きく左右されるため、実際の運用状況を考慮して計算することが大切です。適切な電磁開閉器を選べば、予期せぬ故障やトラブルのリスクを低減できます。

操作コイルの定格電圧

電磁開閉器を選定する際、操作コイルの定格電圧を決めるのがポイントです。操作コイルとは、電磁開閉器の主接点や補助接点をオン・オフするために使用される部品で、形式によって定格電圧が決まっています。そのため、制御回路の電圧仕様に合ったコイルを選ぶことが求められます。

操作コイルの定格電圧は、電磁開閉器本体に明記されています。また、電圧が回路に印加される電圧と一致しているかどうかもあわせて確認しましょう。定格電圧と異なる電圧使用した場合、電圧不足だとコイルが動作せず、過電圧だとコイルが焼け付く可能性があります。コイル電圧を誤ってしまうと、機器の故障を招く原因となるため、慎重に確認しながら選定しなければなりません。

本体のサイズ

電磁開閉器本体のサイズが、取り付ける場所に適しているか選ぶのも、重要です。電磁開閉器は制御盤や機器内部に設置されるため、設置スペースに収まるサイズであるかどうかを確認しなければなりません。

取り付けスペースが限られている場合、不適切なサイズの電磁開閉器を選んでしまうと、ほかの部品との干渉を引き起こし、設置作業が困難になるでしょう。加えて、機器全体の信頼性にも影響を与える可能性があります。

さらに、電磁開閉器のサイズが大きすぎると、冷却やメンテナンス作業にも支障をきたすおそれがあります。そのため、選定時にはフレームサイズや外形寸法だけでなく、周辺機器とのクリアランスや取り付け方法も考慮しなければなりません。また、設置後のメンテナンスや交換作業がしやすい設計にすることもポイントのひとつです。適切なサイズの電磁開閉器を選べば、スペースを有効に活用し、機器の安全かつ効率的な運用が可能となるでしょう。

補助接点の数

制御回路に必要な補助接点の数は、正確に把握しましょう。補助接点は、主に制御回路で使用され、たとえば機器の動作確認やほかの装置との連携に必要な信号を送る役割を担います。主接点に比べて容量が小さいのが特徴です。

補助接点には「a接点」と「b接点」の2種類があります。そのため、それぞれの用途に応じて必要な接点数を決定することも欠かせません。補助接点を適切に選定すると、制御回路の安全性と機能性を確保できます。

サーマルリレーの呼び

サーマルリレーの呼びとは、電磁開閉器に取り付けられる保護装置のことです。モーターなどの機器が過負荷になった場合に、過電流を感知し、回路を遮断する役割を果たします。

サーマルリレーは「バイメタル」と呼ばれる異なる金属の熱膨張率の差を利用して動作します。モーターに流れる電流が設定値を超えると、バイメタルが熱によって曲がり、回路を自動的に切断します。このようにして、モーターが焼損するのを防ぐのです。

電磁開閉器を選ぶ際にサーマルリレーの呼びを考慮する理由は、機器の安全性を確保し、長期間安定した運転を維持するためです。適切に設定しないと、モーターが過熱し、重大な故障を引き起こす可能性があります。そのため、使用する機器の定格電流や使用環境に合わせたサーマルリレーの選定が重要です。

電磁開閉器の代表的なメーカー

電磁開閉器の代表的なメーカーは、以下の3社です。

  • 三菱電機
  • 富士電機
  • 日立産機システム

各社の電磁開閉器の特徴を紹介します。

三菱電機

三菱電機は、モーターや電力機器の保護と制御を得意とする大手メーカーです。電磁開閉器の特徴としては、モーターの過負荷や過電流を早期に検出し、サーマルリレーを通じて回路を遮断することで、モーターを焼損から守れる点が挙げられます。

たとえば「MS-Tシリーズ」は、業界最小クラスのコンパクトなデザインを取り入れた結果、省スペース化の実現に成功しました。コンパクトなため、盤内の配置がしやすく、小型の制御盤にも適しています。

また、標準装備されたフィンガープロテクション機能は、感電防止とメンテナンス時の安全性を向上させています。このように、安心して使用できる設計になっている点も魅力です。さらに「HGC消弧方式」と呼ばれる、電流の高い遮断性能を持つ手法を採用することで、安全性をさらに強化しています。さまざまな国際規格にも対応しているため、国内外問わず幅広い用途で使用される製品です。

富士電機

富士電機は、電動機制御機器の分野で国内トップシェアを誇り、約70年にわたり業界をリードしてきました。同社の電磁開閉器は、さまざまな産業機械分野で優れた制御システムを提供し、高いパフォーマンスを実現しています。

2023年には、環境負荷の軽減と省エネ化を目指した新製品「SC-NEXTシリーズ」を発売しました。SC-NEXTシリーズは、従来のベストセラーシリーズ「新SC・NEO SCシリーズ」の後継機であり、簡単な選定と手配が可能な効率的な製品です。 また、幅広いラインアップによって、さまざまな産業用途に対応している点も富士電機の利点といえるでしょう。小型化された「SKシリーズ」や、欧米市場向けの「SC-Eシリーズ」などもあり、各国の主要規格にも準拠しているため、国内外での使用に適しています。

日立産機システム

日立産機システムは、国内で高い信頼を得ている電磁開閉器を提供するメーカーです。たとえば「HCシリーズ」では、配線の自由度を高めるために、コイル端子を2カ所に配置し、作業効率を向上させています。

さらに、電磁接触器とサーマルリレーを追加部品なしで簡単に組み合わせられる構造が特徴です。耐久性も抜群で、機械的には1,500万回、電気的には250万回と、国内最高水準を誇ります。

また、高効率なIE3モータに対応した遅動形サーマルリレーもラインアップされています。このように、広範な用途に対応できる点も日立産機システムの特徴です。 ほかにも「HCMシリーズ」では、従来比53%の小型化に成功しました。さらに、低消費電力の特性を持っているため、エネルギー効率にも優れています。

まとめ

電磁開閉器は、電気回路の接続や遮断を磁力で制御する装置で、モーターの始動や停止を自動化する重要な役割を果たします。マグネットコンタクターと混同されがちですが、電磁開閉器は保護機能を備えている点で異なります。

電磁開閉器を使用する際には、過負荷保護や摩耗、チャタリング、寿命などに注意が必要です。また、選定時には定格容量や接点の開閉回数などの要素も考慮に入れる必要があります。

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